番外編・違う人

SUZUさんの体験・3 出先の飲食店での話

これは私たち夫婦と私の母と親友(見えるんです類友)の4人で、
買い物をした後に最上階のレストラン街で食事をした時の話。

***

カレー専門店、中華屋、釜めし屋といろいろ立ち並ぶ中、
店の雰囲気を入り口で感じていたので、釜めし屋は止めた方が良いと言ったのですが
私の母や主人が、ウィンドウディスプレイを見ながら釜めしの種類まで決めているようで、
結局、釜めし屋に入る事になりました。

釜めし屋の中は、昼過ぎだったので空いていて、左側の4人掛けの席が2つ。
右側には4人掛けの席が2列で3つと4つあり、私は左側の2つの4人掛けがある方に座れないか聞いてみたのですが、店員は不思議そうに首を傾げて「此方にどうぞ」と
右側の最奥に女性が座る席に案内しようとした。

親友も何か感じ取ったのか、固まっている。
客はその女性1人しか居ないのに、その隣に案内するのはおかしいと思いつつ主人に提案した。

「他にしよう。」

私が嫌がる素振りを見せると、
店員は慌てて出入り口に近い4人掛けが3つ並んだ手前の席に案内するではないか。
主人と母は座ろうとしている。
親友までもが「まぁ、ここならいっか。」とその席に向かっている。
思えば、店に入る前からおかしかったのだろうと思う。

「真面目に再考する道は?」
「「「もう座っちゃたよ」」」

3人の声に、諦めつつ空いた席に座った。
アレコレとメニューを見ながらオーダーをして、運ばれてきたお茶を啜る。
異変を目の当たりにしたのは、その時だった。

奥に座っていた女性が、私たちをジッと見ている。

「逃げて良いですか?」

本当に小さく、小さく心の声を呟いた。
私の異変に反応した親友が、「どうしたの?」と聞いてくる。
夫や母も私の体質を思い出したのか、「なんかあった?」と心配したように聞いてくる。

チラリと女性の方を見れば、不気味な笑顔で此方を直視しているではないか。
今更、出ていくことも出来ないので、女性が動き出さない様に祈った。
食事が運ばれてきたが、一応に微妙な静けさと緊張が言葉を発せない雰囲気を作り出している。

私の異常な怖がり方から、主人と母は何があったか聞いてくる。
食事中にする話でもないし、怖がりの親友がパニックになるのも避けたい。

そして、何よりも女生と対角線上の位置に座ってしまった私は、主人と母の方を見ると、
女性と視線が合ってしまうので、二人を見れないのだ。

「だから、その話今やめ・・・・」

話を後にしようと発した瞬間、見てしまった。

あろうことか、女性は身を乗り出してテーブルの端の方に手を付き、体をくねくねとさせて何かを言っている。
正直、気持ち悪い不気味さがある。
私は完全にフリーズした。

「何が見えてるの?」

親友が私が何を見ているのかと、視線を追って女性の方を見た。
そして、次の瞬間、奇妙な事を言った。

「お婆さんが気になるの?」
「は?誰って・・・女性じゃなくて?」

お婆さんという言葉に、頭が混乱した。主人も母も親友も、私が混乱している理由が分からないのか、
女性でお婆さんだよと説明してくる始末。

「だから、お婆さんじゃなくて、若いウェーブの黒髪の女性が身を乗り出してテーブルの端の方に手を付いて体をくねくねとさせているの!」

相手に聞こえないように言った瞬間、3人は慌てたように、お婆さんの方を向いて私に言ってくる。

「ないないない・・・マジでない。お婆さんが帽子被ってちょこんと座ってるだけだよ」

驚いた主人たちの声が聞こえてしまったのか、女性の口が読み取れてしまった。

見 え て る の ね ・ ・ ・

瞬間的に私は、自分も含めてだが、主人と親友を叱った。

「見るな!考えるな!意識したらヤバいの!」

店員は遠巻きに何事かと見ているが、此方はそれどころではない。
ここにきて、親友が事態を把握してしまったらしく、怖がり出したのだ。

「ヤバいよ。来たら・・・」
「それ以上言わない!考えない!怖がらない!言葉に出すな!」

不思議なことに、自分でない誰かが怖がると冷静に物事を分析し始めることが出来る。
今もずっと、体をくねくねと捩らせて、此方に来ようともがいている女性は、
その場から動けないようだ。いわゆる動けない、向こうの人ということだ。

何処に入ったのか食べた気がしない状態で、店や食材に申し訳ないと思いつつも私たちは店を後にした。

***

後日、リングというホラー映画がテレビ放映された時に、
貞子が井戸やテレビから出るシーンを見て一言。

「この映画、見える人が作ったのかな。あの時の釜めし屋にいたアレの動きに似てる。」と呟いたら、
「主人がどんな動きをしていたの?」聞いて来たので、「こんな感じ」と

不気味な笑みを浮かべつつ、貞子の動きに頭もくねくねさせて、生々しく動いた瞬間

「家でやらないでくれ!」

そう言ったきり此方を見ようとしなかった。

矢張り、ホラー映画は事前にリサーチしているのだなぁと感心した。

彼らは同じ場所にいて、見えないだけで波長が合えば見えるのは仕方ないが、

極力遭遇しない様、心の浮き沈みを無くしたいと思った。

2024-01-05

番外編・違う人」への4件のフィードバック

    1. ↓SUZUさんに問い合わせて回答を頂きました😀

      お婆さんは生きている人間で、私以外はそちらを見ていたようです。
      私はお婆さんの姿は一切見えず、お婆さんに被るようにくっついている方を見ていました。
      たまに波長が合ってしまうと、生きている人間が見えないくらいハッキリクッキリと
      くっついている方を見てしまうので、本来の顔や性別が分からないという
      微妙かつ、迷惑な現象に悩まされていた時期もありました。

      SUZU

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      1. あー、そういうことだったんですね!間際らし現象ですね〜〜〜。私は、山で迷子になったのは、ただ単に100%自分の愚かさで迷子になっただけです😅💦猪🐗はいるけど、熊🐻さんがいない山でよかったです。。。

        いいね: 1人

        1. 自分にだけ別の人に見えるというのは困惑しますね😱
          山で迷子は怖いですよ😰熊がいなくても私は猪だって怖いです😓
          無事で良かった😅

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