番外編・足音と流れる音

SUZUさんの体験・2 立地が特殊な免許センターでの話

公共施設が辺鄙な場所や特殊な場所に建てられるのは、公共物あるあるの一つ。
私が免許取得した免許センターは、大きな街道を挟んで広い霊園の緑が広がる場所に建っていた。

教習所で1年と猶予期間3カ月までかかった私は何度も来るわけにはいかず、彼氏だった主人に車を出してもらい、付き添いまで頼んだ。
万全な態勢で試験を受けたいのだが、付近では「出る」と有名な場所らしく、怖がりな私はどうしても付き添いが必要だった。

試験も順調に終わり、結果、免許を受け取ることが出来たのだが、奇妙な出来事はその後に起こった。

***

会場から少し離れた所で待っていてくれた主人と落ち合い帰ろうとした時、トイレに行きたくなってしまった。
近くの店やコンビニとも思ったが、霊園近くでは怖さは同じだ。

主人にトイレに行くと告げると、ここで待っていると言ってくれた。
建物は四角い建物なのに、トイレの作りが変だった。
男性トイレはフロアに面していて、女性のトイレだけが奥の方にずっと歩いて回り込むような作り。

主人に荷物を預けて、長く続く廊下を進んでいくと女性が一人走り出て行った。

トイレに入ると、手洗い場の奥に古びた3つのトイレが並んでいる。
流石に奥には行けないなと思い、一番手前のトイレに入った。

薄暗い個室に裸電球のようなものが青白く・・・
いや、本当に水色っぽい塗装が剥がれていたので、元は青電球がついていたようだ。

不気味だ。

何故、薄暗い個室にこんな色味をチョイスしたのか分からない。
そんな事を考えて、トイレに入っていると・・・

カツ・カツ・カツ・・・とヒールの音をさせて人が入って来た。

こんな不気味なトイレに人が入って来たことに安堵していると、その足音は一番奥のトイレに入っていった。
勇気があるなぁと驚きつつ、流して出てた後に手を洗って直ぐに出ようとした。

ザーーーー。

奥のトイレの流される音。
私は慌てて外に出た。長い廊下の先に主人が待っている。
足早に主人の元に駆け寄ると、「どうしたの?」と聞いてくる。

私はトイレが怖かったことと、途中で入って来た人が居たから怖さが半減した事を告げた。

「君が入ったと同時に出た女性以外、誰もこの廊下を通ってないよ?」

主人が冗談を言っているのかと思ったが、本当に誰も通っていなかったらしい。
その後、3人の女性がトイレに入って「不気味~」と叫んでいて、戻って来た時に
「あの照明は無い!」「丁度3つ開いてて良かった」と話しているのを聞いて青ざめた。

私が入っている時に聞いた、ヒールの音と水の流れる音。
そして、鏡に映っていた、奥の扉が閉まっていた状況。

その全てに、二度とこの免許センターに来るものかと誓った。

2024-01-04

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