Log No. 0005ラングディタルー(Langditaloo)

座標:LGD-01

荒野。視認限界まで続く金網。国境検問所。レーンのバー全て閉鎖。横のコンクリート建築物。窓越し屋内に男。

『何をしていた?』

「国境は封鎖されました」「アトコレイノスで何かあったそうです」
外に出て遠くに向かい叫ぶ男。「今日は誰も通れませんよー」「あっ?!」男、屋内に戻る。発話「エネリソカ人だ」

『それは何?』

「昔エネリソカで大きな火災があって、大勢の人が死んだんですよ」「街ごと燃えて、今も燃え続けていて、時々炎に包まれた人達がここを通過するんです」「亡霊ですよ」「止められないし、どこに行くのかも分からない」「ただ見送るしかないんです」

黒色のマントを着用した複数の人影を確認。通過。 マントにホログラムのような燃える街の光景が映っている。無言。 異常値は観測されない。


座標:LGD-02

低山頂上。数棟の正方形建造物。周囲は荒野。門に掲げられた看板視認。「Tdqet fintrteofatististi」と記載。建造物に囲まれた中庭ベンチに男。

『何をしていた?』

「考えていたんです」「こうなった仕組みを」

「私はずっと宇宙について研究してきて、この研究所では、空間の歪みも察知していたんですよ」「おそらく数年も前から、少しずつ時間は加速していた」「そして止まった」「戻ったり進んだり、まるでゼンマイを巻き直しているようだ」

「計算したいのに、しばらくすると元に戻ってしまう」「考えたいのに考えが残らない」「方法を思いつかない」「私はどうすべきですか」「私のやってきたことは無駄ですか」「私にできることは残されていますか?」

男、頭を抱えてうずくまる。山中で獣の鳴き声。異常値は観測されない。


座標:LGD-03

郊外の公園。中心に大きな博物館。広いエントランスに、恐竜の骨格標本。その他発掘展示物多数。立っている学芸員の女。

『何をしていた?』

「今日は誰も来ないので、解説の練習をしてました」

「我が国の考古学は先史時代から⋯」「あら。今練習していたところを忘れてしまったわ」「私は古代史の専門員なんですけど⋯」「どこから話すのだったかしら」「古代王朝はどのページだったかしら」「え⋯この本何語?」

女、手持ちの書籍を凝視。「ないないない」と繰り返して発話。異常値は観測されない。


座標:LGD-04

郊外から市街地に向かう道路。数台の走行車。中央分離帯に乗り上げているタクシー。前半分大破。圧縮された運転席に男。

『何をしていた?』

「何じゃねえよ。一目瞭然だろ」「俺死んだんだよ」「死んだと思うんだ」

「3回転くらいしたんだよ」「すごい衝撃が来て押しつぶされたんだ」「なのになんで元に戻んだよ」「死に損なったのか?」「死なねえから死ぬまでやりなおすのか?」

「ひでえじゃないか。俺が何したっていうんだよ」「止めてくれよ!」

車体400メートル手前に移動。高速走行。中央分離帯に接触。蛇行。再び接触。片側車輪が持ち上がる。回転。中央分離帯に乗り上げ大破。様々な破壊音。異常値は観測されない。


座標:LGD-05-A

市街地の外れ。深夜の巨大ホームセンター。取り囲む広い駐車場。外観は簡素。建物内部は高輝度。見渡す限り天井付近まで商品棚。積載商品過多。女、歩行を継続。

『何をしていた?』

「ポテちゃんのご飯を探してるの」「あの子は同じご飯しか食べないのよ」「自然素材だけの完全栄養食」「体に悪いものはあげないわ」「この辺だったはずなのに無いの」「これは似てるのに外国語が書いてある」「前はここらにあったと思うの」「ポテちゃんには最高品質じゃないと」「あの子はあれしか食べないわ」「絶対見つけないと」「ポテちゃんのために」

女、棚の細部まで確認。数歩進み確認行動を繰り返す。店内スピーカーからエンドレスのCM曲。異常値は観測されない。


座標:LGD-05-B

ホームセンター駐車場脇。柵に繋がれた子犬。周辺は暗い。

『何をしていた?』

「おかあさんを待ってるの」「おかあさんが待ってろって」「いい子にしてるよ」「でももどってこないよ」「いくら待ってももどってこないよ」「ここは寒いよ」
「おかあさんに会いたいよ」「おかあさんどうしてなの?」

周囲に人影なし。駐車車両数台。車道から通行車の走行音。異常値は観測されない。


座標:LGD-06

市街地の外れ。建設途中で放棄された建築物6棟。その内の一棟。最上階ガラス張りラウンジに少年。カウンター裏に移動。

『何をしていた?』

「隠れてるんだ」「でかいヤツが通るんだ」「ちょうど窓の高さに顔がきて、こっちを見るんだよ」

『それは何?』

「きっと僕を探してるんだよ」「捕まったら喰われちゃうんだよ」

『それはなぜ?』

「家出したからだよ」「毎日殴られるのが怖かった」「どこか殴られない場所に行きたかったのに、誰も助けてくれない」「だからここに隠れてるんだ」「あの笛の音が聞こえれば、僕は我慢できるんだ」

『それは何?』

「ずっと遠くのどこかで笛を吹いてる人がいるんだ」「聞こえたら僕はひとりでも⋯」

巨大な顔がラウンジガラス面に出現。ゆっくりとこちらを向く。無音。際立った異常値は観測されない。


座標:LGD-07

真夜中の街区。霧が流れ込んでいる。交差点に面したアパート。3階のベランダ。外を見る中年女。

『何をしていた?』

「ここは私の家とは違うと思うんです」「寝室で寝てる人達は家族じゃないと思うんです」「どこか他の場所にいたのに思い出せない」「誰かを愛してたのに思い出せない」「ここにいたくないんです」「ここはどこなんですか?」

街区を濃霧が覆い始める。停滞。女の姿、視認困難。無音。異常値は観測されない。


座標:LGD-08

湖畔に点在する家屋。照明点灯の屋敷。2階の部屋。男、階段方向に歩行中。

『何をしていた?』

「死のうとしていたのですよ」「何をやっても死ねない。すぐ生き返るんです」「ボート小屋まで行ければ、ロッカーに銃があるんです。銃なら確実でしょう」「でもどうしても辿り着けない」「僕を行かせてくれ」「僕は終わらせたいんだ」「終わらせてくれよ」

湖の反対側。山並みに朝日の兆し。見えると同時に消滅。鳥類の鳴き声。異常値は観測されない。


座標:XUR-OP

山間の村。畑で作業する人々。村外れの家屋。朝日が照らす窓辺に老猫。

『何をしていた?』

「待っているのさ」「すぐに来るよ」猫の視線の先、山の向こうに巨大な怪物の頭が出現。数人の叫び声。持ち物を放棄。次々逃走。屋内からも人々。悲鳴。逃走。

「あれはゆっくりとこちらを向くよ」「そして私を見つけるよ」「私があれの目を見ると、あれも私を覗き込む」「見つめ合う瞬間がとても好きだよ」

村人全員居なくなる。放置された道具と食糧。怪物山影に移動。視界から消失。猫、位置変化なし。数値わずかに上昇を観測。座標表記修正不可。