Log No. 0007グルナセテラン (Gurnasetelan) 

座標:GST-01

山麓の小規模な街。わずかに降雪あり。中心部の木造建造物。窓から外を見る男。

『何をしていた?』

「子供達を見送っていたんです」「今年の授業は今日で終わりです」「雪が降り出しましたからね」「春まで外も拝めません。この街は雪に埋もれます」

男、窓を開放。外側鎧戸を順番に閉じていく。

「私は何をしていたんでしょう」「何をしているんでしょうか」「こうなる前に何かできなかったでしょうか」「子供達に何を伝えれば良かったのでしょう」「もう何もできないというのなら、せめてあの子達の無事を祈るしかありません」「どうか無事に、どうか家まで辿り着けますように」「どうか⋯」

雪大粒に変化。外部からの音消失。異常値は観測されない。


座標:GST-02

小規模都市。中心部。駅前の大型病院。長く続く廊下の先。カーテンで仕切られた病室。横たわる少女と男。

『何をしていた?』

「娘の寝顔を見てるんです」「毎日この時間だけが私の安らぎなんです」

『それはなぜ?』

「2年前に事故があったんですよ」「妻と息子は死にました」「この子は生き残りましたが目覚めません」「二度と目覚めないだろうと告げられたんです」「それから私は毎日仕事帰りにここに来て、娘の顔を見てるんです」「最初は奇跡を願い、しだいに諦め、今はただ少しでも長く、この静かな時間が続いてくれたらと⋯」男、窓の外を指す。「ずっと、この子はひとりで夢の中に閉ざされてしまったと、外の世界は動いているのに、私達だけが止まってしまったと思っていました」「でも今は世界中がこの夢に閉ざされている」「そして世界中の人にとってこれが悪夢だとしても、私はこの安らぎが永遠に続くように願っています」

男、少女に視線を落とし、手を握る。延命装置の機械音。異常値は観測されない。


座標:GST-03

小規模都市外れ。荒地に続く道路。道路脇に水路。馬を繋ぐ男。

『何をしていた?』

「馬に水をやるところだ」「水場があって良かった」

『それはなぜ?』

「この馬は一日働いて喉が渇いている」「水が飲めるのは幸いだ」

男、山脈の先を指して「向こう側は砂漠だよ。水は貴重なんだ」「俺達は水にありつけた。ありがたい」男、ひざまずき祈る。「神よ、このお恵みに感謝します。全ての人に水が与えられますように」

風の音。馬のいななき。異常値は観測されない。


座標:GST-04

小規模都市を望む山岳地帯。谷間のダム。ダムに付属する建築物。バルコニー部分に男。

『何をしていた?』

「ダムの様子を確かめていたんです」

『それはなぜ?』

「亀裂が入ったんですよ」「下流に洪水を起こす深刻な事態だったんです」

男、手を合わせ祈る。「神よ、この計らいに感謝します。このまま時が流れませんように」

亀裂が広がる鈍い反響音。異常値は観測されない。