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第8景

「平原・少女と執事」

 「ボクは飛んでいるんだ」「ボクは飛んでいるんだ」「ボクはもっと速く飛ぶんだ」「もっと速く飛んで行くんだ !」
「ボクはキミを追いかける」「キミを追いかけて付いて行く」「キミと離れちゃいけないんだ」「キミを見失っちゃいけないのに⋯」
 2機の巨人工衛星は、さらに高度を下げていた。


 執事は暗い空を見上げて、最初の計算より、墜落が速まっているようですと言った。「あの月が落ちてくるの?」「月ではなくソーラー反射型衛星です」
「もう時間がないなら、あたしは夢想宮に行かなくていいよ」と“少女の意識”は言った。「いいえ行ってください。一度はセラピーを受けておかないと、移送中の安定性が低くなります」「あたしは大丈夫だよ。だってもう一度行きたいもん。生まれ変わろうと思って死んだんだもん」「では何故発射台に来ないで、荒野をさまよっていたのですか?」執事が問うと、少女は答えた。「あの子を探していたの」

「あの子とあたしは一緒に死んで一緒に生まれ変わるはずだった」「なのにここに着いたらあの子は居なかった」「だからまだ拾われてないんじゃないかと思って、タネを探していたの」
「同じ瞬間に死んだのでしょうか?」執事は聞いた。「少しは、ずれてるよね。もっと何日もずれてたのかも」
「培養室に居なかったのなら、まだ拾われていない可能性はあります。回集車に聞いてみましょう」「ただし、タネが見つかっても、充分に培養している時間がありません。誰かと一緒に打ち上げるのも無理ですよ」
「いやよ。あたしはあの子を見つけて一緒に行くの」


 少女が頑なだったので、執事は全回収車と通信して、状況を報告させた。1319号だけが「ワタシはタネを集めて培養ドームに運びます」と繰り返すのみで、要領をえない。執事は故障していると判断して、1319号の元に確認に向かった。少女も付いて来た。

 回収車1319号は、地面にある小さなカケラのまわりを、旋回し続けていた。「ワタシはタネを集めます」執事はカケラを拾って、1319号の格納庫に入れた。1319号は「ワタシはタネを運びます」と言って走り始めた。執事は少女に言った。「このタネがあなたの探している人かどうか、スキャンしてデータを集める時間がかかります」「あなたはその間に夢想宮に行ってください」

 少女は夢想宮に、執事は管制室に、1319号は培養ドームに向かった。