21.駅

 C線のある駅には「指差す男」の都市伝説がある。
 線路を挟んだ向こうのホームに立っているサラリーマン風の男が、こちら側の線路を指差す。何も無いようだが、「見てみろ!」というようにしきりに指差すので、身を乗り出して覗き込むと、電車が入って来る。この駅では実際電車との接触事故が多いのだ。

2018-12-31 20:19 

19.トンネル

 都内のタクシー運転手さんには有名な、幽霊トンネルがある。走行中に突然天井から人が降ってくるので、できれば通りたくなかったそうだ。慌てて急ブレーキを踏んで後続車に追突される事故も起きたし、探しても落ちたはずの人間は見当たらない。
 そのトンネルの上の丘が、整備されて公園になった。造成中に古い人骨がゴロゴロ出て来た。骨を集めて別の場所で供養すると、人が降ってくることはなくなった。

2018-12-31 20:19 

17.夢

 Dさんはしばらく前から、空を飛ぶ夢を度々見るようになった。飛ぶ夢は学生時代にもよく見ていたが、最近のものが決定的に違うのは、とにかくリアルなことだ。夜中に、今住んでいる6階の部屋のベッドから起き上がり、玄関を出て外廊下を進む。端まで来ると手すりに上り、そこから飛ぶのだった。空を飛んで行く時の風の気持ち良さまで、実際の出来事のように感じた。

 ある晩遅くにDさんがマンションに戻ると、隣の部屋の女性がフラフラと歩いている。様子が変なので声をかけると、彼女はハッとして我に返った。自分が外廊下にいるのが信じられない様子で、ベッドで夢を見ていたはずだという。本当に歩いているとは思わなかったと言っていた。
 Dさんと隣の女性は相次いで引っ越しを決めた。

 このマンションは、飲食店やオフィスが並ぶ東西に400mほどの、都会のありふれた裏通りに建っている。しかし以前、通りの西端の高層マンションで飛び降り自殺があり、1年後にも転落死があった。2年後には東の端の方のビルで落下事故が起こり、次に西側の別のマンションで飛び降り自殺があった。さらに2軒先のビルでも飛び降り自殺があり、その隣がDさん達が引き払ったマンションだった。
  それら全てが同じ通りの南側の建物だけで起こったのだ。 

2018-08-13 21:00 

11.満潮

 天井の岩の割れ目から海面に射し込む光が美しく、以前は遊覧船が入っていた洞窟で、ある日事故が起きた。自分の釣り船で向かった3人連れが、全員死亡して見つかった。干潮時に入ったが、ぐずぐずしている間に潮が満ちて出られなくなり、窒息したのだという。

 この洞窟は確かに満潮になると船は通れない。波が激しいので泳いで出るのも難しい。しかし完全に水没はしないし上部に穴もあるので、窒息するとは考えにくかった。

 さらに船上で発見された死体は3体ではなく4体。ひとつは身元不明の溺死体で、死後一週間くらいは経っていた。

 3人の死体に首を絞められた痕があったと噂がたったのち、遊覧船のコースから外されたのだった。

2018-06-29 23:40 

4.体当たりするモノ

 我が家の近くの橋の側では交通事故が多く、決まって夜中の2時頃に急ブレーキ音が聞こえる。ガードレールや電柱に衝突して止まっている車の運転手は、皆決まって「その前に何かがぶつかる衝撃があった」と証言する。

2017-01-27 17:42