
昔住んでいた町は古い住宅街が続き、細い路地がたくさんあった。その日友人達と駅へ向かうのに、路地のひとつを抜けて、近道しようとしていた。最後尾を歩いていた私は、中ほどに差し掛かった時、不意に横から出てきた男と、鉢合わせになった。男は青白い顔で痩せこけており、異常に大きな目をさらに見開いて私を見た。ギョッとして横をすり抜け、友人達に駆け寄って、振り返るともう居なかった。そのまま歩き出したものの、あとで疑問が湧いてきた。あの路地に人が出てくるような場所があっただろうか。
後日友人と確かめると、その路地には横道もドアも何もなく、両側に塀が続くばかりだったのだ。
2019-03-25