39.その家の裏

 Fさんの悩みは隣に住む女だった。
 何年も探してやっと見つけた綺麗で設備も良い理想の中古住宅だったのに、入居してすぐに嫌がらせが始まった。元の持ち主は、ここは息子のために建てた家だと言っていた。仕事の関係で地元には戻れなくなったので、盆暮れの帰省で泊まる以外は、ほとんど使っていなかったそうだ。隣も自分の土地で、親族が住んでいると聞いていた。

 隣の女は顔を合わせる度「出て行け!」「ここに住むな! 」などと叫ぶ。ゴミを投げ入れるとか車を傷つけるとか、嫌がらせはエスカレートして行った。向かいに住んでいる元の持ち主に話して注意してもらっても、しばらく経つとまた始まった。近所の人に聞くと、あの女は昔からおかしい奴で色々問題を起こしたという。母親が出て行ってからは余計ひどくなり、誰とも付き合わないのだそうだ。我慢できずに警察に相談し、監視カメラをつけて証拠を集めるようアドバイスされた。仕方なく高価なカメラを設置すると、今度は裏に回って植木鉢を割られた。しかし画面では見えていなくても、音は入っていることに気付いた。

 ある日音声をPCに取り込んで処理し、かすかにしか聞こえない声のボリュームを上げてみた。
 するとその声は確かに「ここに埋めたのに⋯」と言っていた。

2019-03-16