36.通り道

 山の麓の村で子供達が聞かされるのは、山で草がなぎ倒されているのを見つけたら、何をしている途中でも一目散に逃げ帰れという言いつけだった。草原に1メートルくらいの幅で押しつぶされた痕が、蛇行しながらどこまでも続いているのを見た人は、何人もいるのだった。

2018-11-16

30.人魚

 その海辺の村には古くからの掟があり、春の大潮の夜に海に行ってはならない。人家から離れた小さな入り江に、人魚達がやって来る。人魚は美しく、どんな男も一目で魅入られてしまう。しかし彼女達は繁殖の相手を、行為が終わると喰うのだ。夜明けの静かな海面が、被害者の鮮血で赤く染まると言う。

2018-11-16