37.提灯谷

 秋の連休に実家に帰ったAさん。父とキノコ狩りに山へ入った。子供の頃はよく行った馴染みの山なので油断してしまい、気がつくと父とはぐれていた。道に戻って待とうと思ったが道も見つからない。そんなに山奥には入っていないはずなのに、どっちに行っても田畑も見えない。完全に迷っていた。うろうろするうち日も暮れて、森の中は暗くなった。どうしようかと思っていたら、かすかに話し声が聞こえた。足元に気をつけながら声の方に進むと、大勢の人間が話しているらしい。黒い木々の影の間から、遠くにたくさんの明かりが見えた。それが並んだ提灯のようだったので、村で祭りでもやっているのかと思った。真っ暗な斜面を慎重に進んで行き、しばらく下にばかり気を取られていた。平らなところに出て顔を上げて、やっと正体が分かった。人魂の群れだった。
 慌てて斜面を戻り、つまずいたりぶつけたりしながら必死で走った。心臓がばくばくして限界になった時、不意に明るくなって視界がひらけた。村に出ていた。
 まだ日暮れでもなかったという。

2018-11-16

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