35.鳥

 Gさんにはもう40年も心に引っかかっている記憶がある。彼がまだ故郷の山間の村に暮らしていた頃の話だ。
 その日昼食を食べ終わって車に向かうと、頭上を大きな黒い影が横切った。見上げるとそれは、翼を広げた長さが5メートルもある鳥だった。車庫の大きさと同じくらいだったので間違いない。しかもその鳥は人間の幼児を掴んでいたのだ。
 追いかけたが見失い、慌てて家に戻り家族に訴えたが相手にされず、夢でも見たんだろうとからかわれた。警察へ電話しようとしたのも止められた。
 誰にも信じてもらえなかったので、Gさんはそれ以来この件について喋らなかった。しかし行方不明事件がなかったかずっと気にかけていて、子供が見つからないと聞くと巨大な鳥を思い出してしまう。
 今でもふと、あの時どうすれば良かったのかと考える。

2019-03-26

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