3.夜桜の下

 もう随分前だが桜の時季にある公園を歩いていた。夜の8時半ぐらいだったと思う。その少女を見たのは林の中の小道だった。

 真っ暗な木立の奥に白い服を着た10歳くらいの女の子が立っている。恐い顔で何かを見つめていて、その視線の先には中年男性3人組がいた。彼らは何も気づかず、和やかに談笑しながら少し前を歩いていた。特に変わったところはないように思えたが、少女はずっと彼らを目で追って睨んでいた。不気味だったので花見客で賑わう広場に出るとホッとした。

 先を行く3人は、すでに飲んでいたサラリーマンのグルーブに合流してシートに座った。すると隣で帰り支度をしていた親子連れグループで、突然赤ちゃんが泣き出した。母親があやしても火がついたように激しく泣き、追い打ちをかけるように小さな子が悲鳴を上げ始めた。

 私は横を通り過ぎながら、離れた場所にいた別の少年も、真っ青になって固まっているのに気付いた。
 少年もまたあの男性達の方を凝視していた。

2019-03-28 00:01

3.夜桜の下」への3件のフィードバック

  1. 女の子や他の子供達には何かが見えていて、大人には見えないらしいです。
    3人の男性が幽霊なのか、彼らに何かが取り憑いてるのか分かりません。声をかけて聞いてみたかったけど、聞かない方が良いのでしょうね。

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