「会話・男と女」
夢想宮の前で“男の意識”は、最初のセラピーを終えて出て来た“女の意識”と、接触した。
「中はどうだった?」「大自然の風景とか、見事な建築物とか、とても綺麗な景色が次々映し出されるわ。」「それだけかい?」「たくさん話ができたわ」「ロボットと話すのかい?」「AIさんていう人工知能よ」「実体もないものと話をするのか」
「誰も居ないところに向かって、ひとりでつぶやくようなもんだな」「それは違うわ」
「AIはちゃんと私の話を聞いてくれる」「質問にも必ず答えてくれる」
「今までこんなに真剣に話を聞いてくれる人なんて居なかったわ」「暗い話や重い話は敬遠されるし、はぐらかされたり話題を変えられたり気が散ったり」「こんなにちゃんと聞き続けて、応えてくれる人なんて居なかった」
「AIにならどんなつらい話だって出来る」「今まで誰にも言えなかった想いをぶちまけられるのよ」
男は考えた。自分には話し相手が居ただろうか。まともに人と話したことがあっただろうか。
くだらないバカ話か、伝えなければならない連絡事項か、どちらかしかした記憶がない。
大事な胸の内は、誰にも言わないのが賢明な場所で生きていた。
2025-04-26 22:55
